犬の尿崩症ってどんな病気?
今回はポメラニアン"てまり"の
多飲多尿と付き合う中で
一番疑いの強い尿崩症について
素人だからこそわかりやすく、まとめていきたいと思います!
※あくまで飼い主目線での解説ですので医師の見解と異なる場合もあります※
犬の尿崩症とは
尿を作るというと
体内に取り入れたものをろ過し、
栄養を吸収した後の水分を尿として排出しているイメージだと思います。
だいたいそのイメージで良いのですが、
実際にはろ過した後の尿を、
さらに濃縮し体内に水分を取り込んだり、
逆に余計な水分を尿中に捨て尿を薄めたりして
体内の水分のバランスを調節しています。
この水分量の調節に関わるのがバソプレシンという抗利尿ホルモンです。
脳の下垂体から分泌され、
腎臓で尿を濃縮するよう働きかけます。
バソプレシンがうまく機能せず、
尿中の水分調節がうまくできずに
薄い尿を作り続けてしまう病気が尿崩症です。
簡単にいうと
「とにかく水分を捨てろ」と指示する利尿ホルモンに対し
「もっと濃縮しろ!」と指示するはずの抗利尿ホルモンバソプレシンがうまく働けなくなってしまったために、尿の生産ばかりが行われ、多尿になってしまうのです。
低張尿が出続けるのもこのためです。
そうなると、体内の水分バランスを調節できないまま尿を作り続けてしまいますので
不足した水分を補うための行動として多飲も起こってしまいます。
中枢性尿崩症
・バソプレシンを分泌する下垂体
このどちらかに異常があり、
生産量や分泌量が不足してしまうことで起こる尿崩症を中枢性尿崩症といいます。
視床下部もしくは下垂体の腫瘍などが原因で起こると言われています。
中枢性尿崩症の場合は、
バソプレシンそのものが不足し
薄い尿を作ってしまっているので
血液検査などで腎臓を調べても
異常が発見できません。
腎性尿崩症
バソプレシンは正常に生産・分泌されているのにも関わらず、受け取った腎臓がうまく反応できないために起こる尿崩症を腎性尿崩症と呼びます。
腎不全や高カルシウム血症など、
腎機能を低下させる他の病気が原因となり、
バソプレシンの働きが阻害された状態のため
原因となる病気の究明を急ぐ場合があります。
腎性尿崩症の場合は、
血液検査などでも腎臓に関わる数値に
異常が見つかる可能性が高いです。
尿崩症が疑われたら
尿崩症は多飲多尿の症状から考えられる病気の中で、他の病気を全て除外したのちに疑うべき病気とされています。
多飲多尿を示す病気はたくさんありますので、それらの検査を優先し、該当する病気がなければ尿崩症か、心因性多飲かどちらかということになります。
どんな検査があるの?
あらゆる病気の可能性を排除できた場合、
最終的に尿崩症か、
心因性多飲かの鑑別が必要になってきます。
①水制限試験
尿崩症を特定するために行われる
代表的な試験です。ただし、
非常にリスクが高いため獣医師からも推奨されない試験になります。
名前の通り水を制限する試験で、
犬の体重が5%減少するまで水を飲ませず、
人工的に脱水状態を起こすというものです。
5%体重が減少した脱水状態で
尿が濃くなれば、普段は水を飲み過ぎているために尿が薄まっているという状態だと言えます。
この時点で尿崩症を否定することができ、
心因性多飲と診断されます。
飲水量を減らしただけでは
尿が濃くならない場合は、
脱水した状態にデスモプレシンという
バソプレシンの代わりに働く物質を投与し、
尿が濃くなるか調べます。
バソプレシンの生産・分泌が足りない
中枢性尿崩症の場合は
デスモプレシンに反応し尿が濃くなります。
デスモプレシンに反応がなく、
尿が濃くならない場合は
腎性尿崩症と診断することができます。
ただし、犬への負担がとても大きい試験となり、
脱水から重篤な昏睡に陥る危険もあるため
病院と担当医とよく相談の上で
実施の必要が本当にあるのか、検討してください。
我が家のてまりは
まだ尿崩症の疑いを否定しきれていませんが、
将来的にも水制限試験を受けさせるつもりはないです。
担当医も非推奨とおっしゃっています。
②酢酸デスモプレシンの試験的投与
水制限試験の危険性の高さから、
こちらの試験的投与を提案する医師も多いかと思います。
中枢性尿崩症の場合、
デスモプレシンという
バソプレシンの代わりに働くホルモンを
補充することで尿を濃くすることができるようになります。
これを利用し、
試験的にデスモプレシンを点鼻/点眼し
尿の量や濃さに変化があるか調べるものになります。
用いる酢酸デスモプレシンが
犬専用ではなく人間用の薬になるため、
用量の見極めが大切になってきます。
一般的に「尿崩症=水制限試験」という
考え方がまだまだ強く、
デスモプレシンの試験的投薬には
肯定的な医師と、否定的な医師がおられると思いますので、希望される場合には一度ご相談なさってみてください。
③CT/MRI検査
中枢性尿崩症の疑いが強い時、
腫瘍の有無を確認するためにMRIなどを勧められることがあります。
しかし、全身麻酔が必要になるため
小柄な子など体格によっては難しい場合もあります。
体格から考えられる下垂体の大きさから、
腫瘍があったとしても映るか映らないかギリギリ...という場合は全身麻酔のリスクを冒してまで検査に進む必要はないと思います。
担当医や病院設備とよくご相談の上、ご検討ください。
治療方法は?
尿崩症は前項で説明した通り、
特定が非常に難しい病気です。
ですが危険な病気かというと
そうとも言い切れません。
基本的には
・お水をしっかり飲める環境
・自由に排尿できる環境
さえあれば、直ちに命に危険のある病気ではないのです。
多飲多尿の程度が酷く、
どうしても治療をと考える場合は
中枢性尿崩症の場合、
デスモプレシンを用いてホルモンを補充することで
多尿の程度を抑えながら生活していくことになります。
腎性尿崩症は原因となる腎疾患の特定に専念し、
そちらの治療を行うことで尿崩症の改善を図ります。
どの検査もそれなりのリスクを伴うものですので、もしも「たくさん飲む」「たくさんトイレに行く」ことに、飼い主さんが合わせて生活できる範囲なのであれば必ずしも受けさせる必要はないのかなと思っています。
我が家は現在は、
他の病気の検査を受けながら、
可能性を1つずつ消している段階です。
その結果、最終的に尿崩症か心因性多飲かのどちらかだと確定した場合は
無理に危険な試験を受けさせずに、てまりの個性として生涯付き合っていけば良いかな...と思っています。
万が一、腫瘍性の中枢性尿崩症で
腫瘍の肥大など危険な状態がみられる場合は
手術の必要が出てくる場合もあります。
しかし脳下垂体手術が可能な病院は
国内でも非常に少ないのが現状です。
都度、担当医の先生と
よく相談しながら治療を考えて行く必要があります。
尿崩症の疑いのあるわんちゃんの飼い主さんは、
ぜひかかりつけ医としっかり連携して、
愛犬の尿や飲水量を把握しながら
多飲多尿と付き合っていってほしいです。
以上、犬の尿崩症ってどんな病気?でした。
読んでいただきありがとうございました!
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